ぱるるは ある村に生まれた その村でぱるるは 『のろま』と呼ばれていた 何をするにもマイペースだったからだ 村人たちは言った 『そんなにのろのろしてたら仕事が進まない!もっとテキパキ動きなさい!』 ぱるるは迷惑をかけたくなくて がんばって周りと同じように動こうとした そして ぱるるはだいたいのことは そつなくこなせるようになった でもやっぱり できる村人たちをみると その人たちには到底およばない そこでもまた言われてしまう 『もっとテキパキ動きなさい!』 ぱるるはがんばった そしてさらに多くのことをそつなくこなせるようになった ぱるるの生活は一見充実しているように見えた でもぱるるの心は満たされなかった ぱるるは思った これ以上なにをがんばればいいの? ぱるるは必死で周りのペースについていこうとがんばった そしてやがて ぱるるは体調を崩してしまった ぱるるは家で休息を取った 久しぶりにほっとして深い眠りについた 翌朝目が覚めると体調は良くなっていたが 体に力が入らなかった そしてぽろっとつぶやいた 『もうこれ以上がんばれない』 ぱるるは旅に出た 行先は決めていなかった 村を出たとき 風が西に吹いたので ぱるるは西に向かうことにした ぱるるが歩く先々では 見たこともない景色が広がっていた その素晴らしさにぱるるは思った 『今まで僕の見ていた世界は ほんの小さなものだったんだ』 しばらく歩いていると ぱるるはある村にたどり着いた 『ぽぽぽ村』と書かれている ぱるるはその村に立ち寄った その村は一面色とりどりの花々に囲まれていて そこら中に果樹があり 村中いたるところに野菜や野草が一緒になって生えていた それらはだれかのものということはなくて 村人たちは自由にそこら辺の野菜や果物を採って食べていた 仕事という仕事はなく 家の修理や料理 洋服づくりなど 必要があればみんなで協働してやった 村人はゆったりと自然と共に過ごすことに一番時間を使っていた ぱるるはその村にしばらく滞在することにした 村人はぱるるのために簡易的な家を作ってくれることになった ぱるるは村人たちと一緒に家づくりをした てきぱき働くぱるるを見て 村人たちは言った 『これこれ もう少しゆったりうごきなされ』 ぱるるは目を丸くした 今までそんなこと言われたことがなかった 村人は続けた 『そんな早さじゃ家の声をどうやって聞くんだい? 家は生き物なんだ ちゃんと家の声に耳を傾けて建てないと大事な柱がゆがんでしまうよ』 ぱるるは驚いた 『家の声を聞く?』 ぱるるの村では緻密な計算で設計図を作ってそれに基づいて家を建てていた だが このぽぽぽ村では家や木材と対話しながら感覚で家を建てているのだ よくよく見渡せば それぞれの家は個性があり その佇まいからはあたたかさが感じられた 何から何まで僕のいた村とは違う ぱるるは戸惑ったが 妙にほっとしていた 生まれ故郷の村よりも こちらの方が故郷のような気すらしていた ぱるるは水汲みに料理 あらゆることを村人と共にした ぱるるは度々村人に言われた 『これこれ もう少しゆったり動きなされ』 ぱるるはその度に目を丸くしたが やがてうれしくなった ここではぼくは息ができる そんな気持ちだった というのもぱるるがいた村では とにかく速さと正確さが問われて 自分は機械と変わらないんじゃないかとさえ思っていたからだ この村ではぱるるを生かしてくれる そんな気がしていた 夜になった ぱるるは村人たちと星を眺めていた ぱるるは聞いた 『この村の昔話をおしえてくれますか?』 村人は答えた 『ムカシバナシとはなんだい?』 ぱるるは答えた 『この村がどうやってできたのか 今までどんなことがあったのかということです』 村人は言った 『わからないなあ この村は気がついたらできていて 私たちも気がついたらここにいたからね』 ぱるるは驚いた ぱるるの村では 夜その村の歴史を語り合っていた ぽぽぽ村の人たちのような答えは聞いたことがなかった どうやらぽぽぽ村には過去がない ぱるるは聞いた 『明日は何をしますか?』 村人は答えた 『アシタとはなんだね?』 ぱるるは説明に困った 『明日は明日です ぼくたちが寝て起きたらやってく る次の日のことです』 村人は答えた 『わからないなあ アシタとやらは本当に存在するのかね? 君は奇妙なことを言うねえ』 ぱるるは思った (奇妙なのはそっちの方だ)と どうやらぽぽぽ村には未来がない ぱるるは不思議な感覚におそわれたが 心の奥は妙に静かだった そしてただ星を眺めた 見慣れたはずの星空が やけに輝いて見えた ぱるるはふと我に返って思った こんなにゆっくりしてていいのかな? ぼくは何かしなきゃいけない気がする 突如現れた焦燥感 でも横を見ると 村人たちはゆったり星を眺めたり 寝転んだり 思い思いに過ごしている 村人たちのゆったりした佇まいに ぱるるの心に 静けさがもどってきた 村人はぱるるに言った 『ここに留まるかどこかへ行くかはお前さんの自由だよ でもお前さんがどこかに行ったところでこの村は消えたりしない いつでも帰ってきたらいい』 ぱるるは静かに頷いた そしてその場に寝転がり 星を眺めた 星の瞬きと 村人の温もり 地面から伝わってくる 土のやさしさ それらを身体いっぱいに感じたとき ぱるるは初めて息をしたような気がした
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